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4
正直に言おう。私はそのとき微かな不快感を感じ、顔に何か――食べ滓でもついているのかととっさに気になって口元をぬぐった。私は自分の容姿にそれなりの自信を持っている。大概の人は、男も女も、私をはじめて見ると二度見する。こっそりと、あるいは露骨に。
ヒースクリフは私の顔を見て、口元を歪めた。それはあまりない反応だったので、私は――自分で言うが――機嫌を損ねたのだ。
彼はしかし、体を乗り出して私に近づいた。私は思わずあとじさった。
「は、はじめまして、ですよね?」
これが彼の第一声だった。私は無言でうなずいた。
「私はヒ……ヒースクリフ。ペンネーム、ですが」
私は少し笑った。私の中の「ヒースクリフ」を間抜けにしたような顔貌だったからだ。
「あなたは?」
そこではじめて気づいて、「自己紹介」した。
「私はキャサリン。キャシーと呼んで」
我ながら、なぜ自分がそんな言葉を発したのか、いまだにわからない。きっと運命だったのだ。
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