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5
すぐにわかったことだが、彼は私に一目ぼれをしたのだ。私は一目ぼれされるのに慣れている。でも、彼の場合は勝手が違った。彼は――驚いたことに、いきなり私の手を握ったのだ。
「お目にかかれて、僕は幸せです」
何が幸せなのか。今思い出してもくくっと笑いがこみ上げる。私はグラスのウィスキーを傾けた。さっきから体がこわばって、息抜きがしたくてたまらない。今私は彼の絵のモデルをしている。
「な、何がおかしいの」
ヒースクリフが不思議そうに尋ねた。私はわざとウィスキーをゆっくりと味わってから、答える。
「あなたと初めて会った日のことを思い出していたの」
ヒースクリフは赤くなる。はにかんでいるのだ。彼はピュアだ。その個性的で醜いとさえいえる顔でさえも、いっさいの邪気を含まない。
「驚いたよ」
「驚いたのは私のほうよ」
「やっと……僕のミューズを見た、と」
「ばからしい」
私は吐き捨てるように言った。
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