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「疲れたわ。今日はもう帰る」  私はそう告げて、グラスをキッチンで洗った。私がそうしないと彼はそのままずっと置きっぱなしにする。ヒースクリフは生活能力が著しく欠けている。 「え、もう帰るの」  物足りなさそうに言う彼を振り切るように、私は彼の部屋の外に出ようとした。 「残ったって、やることないでしょ」  言い捨てて、ドアを思い切り閉めてやった。そう、私は彼と付き合っていると言えなくもないが、夜を共にしたことはほとんどない。同棲もしない。こうしてたまに、彼にインスピレーションを与えるために訪れるだけ。たまに食事を作ってあげるが、一緒に食べることもほとんどない。彼のべちゃべちゃとした食べ方が嘔吐感を催すほど嫌いなのだ。  これで本当に、付き合っていると言えるのだろうか。
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