海底のわたしへ

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「今度さ、皆で海に行こうよ」 さりげない誰かの一言から、男女6人程で海に出掛けようという話になった。楽しみだねと声を揃える皆の横で、小学生の時のスクール水着しか持ち合わせて居ないことに気付いた私は、近くのデパートへと足を運ぶことが決まってしまった。 戦隊ヒーローのおもちゃを買ってほしいと懇願した小学3年生ぶりのデパートは、何故か少し狭く感じた。今でさえ欲しいと思わせるそのおもちゃ達を、ごめんと思いながら素通りする。 気付けば夏の風物詩が立ち並ぶ場所まで足を運んでいた。 付き添いで隣にいる母が、「ほら、好きなものを選んで」と私を水着コーナーの前へ立たせる。そこには【女の子】が着るような可愛らしいフリルの付いた水着が沢山並んでいた。 へえ、最近の女の子はこんなものを着るんだな、と感心したのも束の間、これは「私」が着るものであることを悟る。 少し膨らんだ胸を出てくるなと押さえつけた私の意志とは反対に、胸を程よく露呈する事が当たり前だというその水着。 中学生になって周りの女の子が喜んだ制服のスカート。 少しずつクラスメイトの女の子のポーチに増えていく化粧品。 そのどれもが、私と同じ性別を持つ子達の「普通」であるのを知るのと同時に、私が「普通では無い」ことを知ってしまった瞬間になる。
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