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「真子、どうしたの」
悪戯にも女の子らしい名前をつけてくれた母からの言葉で我に返った。
「ううん、なんでもないよ」
「水着、お母さんはこれがいいと思うけど」
どうかな、と母が手に取った水着は薄ピンク色の愛らしい形をしたものだった。きっと、同じクラスメイトの奈々ちゃんが着たら似合うんだろう。
私は、着たいとも思わないのだけれど。
ただ、その時の私は「普通」から外れた時に訪れる不幸を知っていた。
イジメ、陰口、悪口、冷たい目。
いつだって普通を繰り返してきたじゃない。普通に縋り付いて必死に周りに合わせてきたでしょう。
だから私は、この日に全てを決めた。
「じゃあ、その水着にしようかな」
私は、女の子であると、心に刻むこと。
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