海底のわたしへ

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徐々にビルが木々の緑へと変化していくのを眺めているうちに、私が女の子として生きる事を決めたあの日を思い出す。 デパートの帰り道に、ヒーローたちのおもちゃに見向きもせず足早に家路についたこと。部屋に溢れる「男の子っぽい」ものを纏めてゴミ袋に詰め込んだこと。髪を伸ばそうと決めたこと。 母はそんな私を見て、「急にどうしたの?」と心配そうに声をかけてきたけれど。 覚えてるよ、お母さん。 その日の晩ごはんが、気分が良い時によく作るポテトサラダとビーフシチューだった事。 ピンポンと新幹線が知らせた地元の名前に、席を立つ。ヒールの心地良いリズムのままに駅に立った。 都会とはまた別の空間がそこにはある。 時間の流れもなんだか少し遅く感じるし、空気は美味しいような気がした。 その空気すら鉛のように重く感じるのはきっと、この土地に私だけなんだろう。 駅を降りて徒歩10分の所にある喫茶店が待ち合わせ場所だったが、まだ待ち合わせの時間までは2時間ほどある。 私はいつもなら通らない別の改札を抜けて、女の子を始めたあの海へと足を運ぶことにした。 今まで頑張ったことを褒めるためと、これから女の子を頑張るための決意を固めるため。
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