彼は修理屋さん

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 ここは町の修理屋さん。おもちゃ、家電、家具、精密機器から専門知識が必要なものまでなんでも直してくれる。直すのはおじいさんたった一人だ。彼は様々な職業を経験し、あらゆるものが直せる。町の人からは慕われていた。親の代からお世話になっている地元民は多い。 「じいじ、これ壊れちゃったの」  じいじ、の愛称で呼ばれ今日もお客さんが入って来る。マリナは足が折れてしまった鳥のおもちゃを差し出した。 「ああ、この鳥は足が細いからね」  飛ぶ機能はあるが着地は下手。そのため壁や地面に激突して壊れやすい。彼は慣れた手つきで手早く足を直してマリナに渡す。 「はい」 「わあ、ありがとう! えっと、いくら?」 「出世払いでよろしく頼むよ」  マリナは嬉しそうに受け取って店を出た。  最近はお金を出せば何でも買える。わざわざ修理などしなくても新作がどんどん出る。人は長く物を使うのをやめて新しいものを求めるようになってきた。壊れないように使う、という事をしない。 「じいじ、これ治るかな?」  トモカズが持ってきたのはゲーム機。もう新作ゲームなどでないレトロゲームの部類。トモカズの家は裕福ではないので、中古でたたき売りされていたこのゲーム機をやっと買うことができた。 「画面の半分、映らないんだ。落としたりしてないんだけど」 「ああ、時間がたったことで液晶がダメになっちゃったな。ちょっと待ってくれ」  彼は慣れた手つきで手早く直す。作業机の近くにある、何やらパーツがたくさん入った収納ケースをあさるとパネルを取り出して交換した。 「はい」 「ありがとう。あの、でも、お金……今、二百円しかなくって」 「出世払いで大丈夫だよ」 「あ、ありがとう!」  トモカズにとって二百円は全財産。それを彼はわかっているので先延ばしにした。トモカズもそれがわかり、満面の笑顔を浮かべて中学生になったら絶対払うから! と言って店を出た。  気に入らなければ違うものを買えばいい。わざわざ直したって気に入らない物は気にいらないのだ。性能が高いもの、デザインが良いもの、まるで息をするように新作は当たり前に販売される。  子供のころは来ていたが、大人になってから来る者は少ない。自分で働けるようになったら金が手に入る、古臭いものをいつまでも使う理由などない。
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