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長引いた残業からようやく解放されて帰宅する0時半。狭い玄関の靴箱の上にガチャンと鍵を置く音がうるさく響く。いつ届いていたのかも忘れた手紙たちが何層にも重なって、ザラついた砂埃と一緒になっていた。その中に混ざる公共料金の締め切りがいつまでだったか、そんなことが頭をよぎるが疲れが勝って思考はさほど巡らなかった。
「はあ」
ドサッとソファに腰を下ろし天を仰く。凝り固まった首筋から腰にかけてのラインがすーっと伸びていくのがよく分かる。その気持ちよさに身を任せ目を閉じればゆらりとこちらを襲ってくる睡魔。ダメだ、今寝たら遅刻しかねない。せめてシャワーを浴びて飯を食ってからじゃないと。そうやって動かなければならないと分かっていても、すぐには動き出せずに時間だけがただゆっくりと過ぎ去っていく。付けたテレビの中では、誰かが不倫しただのなんだのとくだらないニュースが流れていた。
せっかく温めてもらったコンビニののり弁がすっかり冷めた頃、やっとのことで身体を動かして缶酎ハイだけをビニール袋から取り出した。のり弁に合うようにあえて甘党のこの俺がキツく苦いレモン酎ハイを選んだのに。それでも弁当を食べる気力も体力も湧いてこずに、そのままスマホを酒のつまみにしてただ時間を消費していく。もう、2時になる。
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