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「なんとなくこれが一番リラックスできそうな気がしました」  別に嘘をついているわけではないが、これが一番の決め手ではない。  なんとなく千鶴さんが好きそうなのがこれだと思ったのだ。 「そっか。じゃあそれにしよう」  千鶴さんのこの反応からは、僕にどれを選んでほしかったのかはうかがえない。  きっとどれでもよかったんだろうけど、千鶴さんの中でも一番は決まっていたとも思う。  千鶴さんはどれがよかったのかと聞けばいいことなのだが、聞いてもたぶん答えてくれない。  こういう質問に正解はないものだと思う。 「化粧品以外にも見ていきますよね?」 「そうしたいけど、時間は平気?」  時間はもうすぐ五時四十分。閉園までここにいることは確定だ。  千鶴さんが一日を通してずっと時間を気にしてくれているから、僕は途中から気にならなくなった。 「大丈夫ですよ。買い物して富士山デッキに行って、それでちょうど時間になるんじゃないですかね」 「それなら遠慮なく。ハーブティーもなにか買いたいとは思ってたんだ」  こうして園内ショップを隅々まで見て回ることになり、化粧品以外には千鶴さんの希望でハーブティーを一つと、僕の希望でブルーベリーのシロップを買った。  お会計はひとまず僕がすべてすることになった。
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