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「千鶴さん」
手すりに手をかけて遠くを眺めている千鶴さんの名前を呼ぶ。
千鶴さんは前を見たまま「なぁに」とだけ答えた。
「こっちおいで。あっためてあげる」
この言葉を言った時点で、僕自身の体温が一度は軽く上昇したと思うのだが、こんなことを言えるのも今しかないと思った。
「…………」
千鶴さんはこっちを振り向いたものの、黙ったまま僕の顔をじっと見ている。
まだ顔が赤くなっているのを隠せるほど暗くなってはいない。
「蓮くーん」
小さく手を広げた僕に向かって千鶴さんがゆっくり飛び込んできた。
もうすぐ閉園だからだろう、周囲に誰もいないことは確認済みだ。
「えへへ、あったかい」
そうでしょうね。
今の僕はそこらへんのヒーターなんかよりずっと発熱機能が発達しているのですから。
僕の腕の中にすっぽり収まる千鶴さんの髪をなでる。
柔らかくて触り心地がいい。
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