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「やっぱりいいなぁ、蓮くんのタメ口」
「今日はもうおしまいですよ」
「いいよ。こうやって不意打ちで飛んでくるのもいいものだよね」
そんなにいいものなのだろうか。
前からギャップ萌えを激しく主張してくる千鶴さんだけど、僕は今のところ千鶴さんに対してそういった萌えポイントを見つけられていない。
見つける努力をしていないというのもあるけど。
「っていうか、それじゃせっかくの景色が見られないじゃないですか。ほら、あっちに見えるのが河口湖ですよ」
きっともうすぐ閉園時間だから、最後にこの眺めを見ておくべきだと思った。
千鶴さんを強引に引きはがして体の向きを変える。
「うわー、今のもいい! ねぇ、もう一回やって!」
「ちょ、なんですか?」
肩に乗せていた僕の手を振り切って、再び僕に抱きつく千鶴さん。
間違いなく河口湖は目に入っていない。
今度は何をお望みですか。
「今の、ぐいーんって向きを変えるの、もう一回!」
遊園地のアトラクションじゃないんですよ。
なんて思いつつ、しっかり千鶴さんの要望に応えてしまう僕。
いささか甘やかしすぎだろうか。
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