25人が本棚に入れています
本棚に追加
「蓮くんだって、お化粧してたほうがいいとは思うでしょ?」
「そりゃあ、まぁ。だけど、それであんなに苦労するなら、もうちょっと楽にできないものかとは思いますけど」
「そうは言っても、無意識に比べてない? お化粧をしていない女性はかわいくないとか、華がないとか」
「そう言われちゃうと……」
「でしょう? そりゃそうだよ。きれいなほうが印象いいに決まってるもん」
そこは認めざるを得ない。
実際に見比べる機会はないとはいえ、お化粧することそのものを否定することは難しそうだ。
「じゃあ、お化粧は大変でもしっかりするべきだってことですね」
「私はそう思うよ。もちろん生きていくためには必要ないと思うけど、今はそういう極端な話じゃなくて、こんなふうに普通にデートができる二十代の男女での話だから」
ここで話はひと段落を迎えたのだろうか。
ここまでは理解できないことはない。
むしろ千鶴さんの言い分にちゃんと納得もできている。
「でも、どう考えても女性のほうが大変ですよ。これもしょうがないってことになるんでしょうか」
せめてこれは言っておきたかった。
僕が一番心苦しいと思っていたのはこの部分だから。
「そう思ってくれてるだけで嬉しいよ。世の中にはきっと、そんな配慮をまったくしない男の人だっているんだから」
千鶴さんに伝わったのならそれでいい。
千鶴さんの陰ながらの努力に対し、僕は敬意を払うことは忘れないようにしたい。
最初のコメントを投稿しよう!