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「話を進めるけど、蓮くんはさ、女性がどうしてお化粧すると思う?」
次もなかなか難しい質問だ。
ただ、これもきっと正解があるものじゃないと思うから、正直に答えさせてもらおう。
「自分をきれいに見せるためじゃないですか」
「ふんふん。じゃあ、なんのために自分をきれいに見せるんだろう」
「なんのため……。そう聞かれると、答えに困りますね」
「相変わらず正直だねぇ」
そう言って千鶴さんは笑った。
ときどき出てくるからからとした笑い声に、僕は戸惑うことしかできない。
女性が何のために化粧をするのか。
この質問に対する答えが思い浮かばなかったわけではない。
ただ単に、あまり言葉にしたくないと思っただけのことだ。
「じゃあ質問を変えるね。蓮くんもさ、おひげは毎日剃ってるよね?」
僕が何も言わなければ話は先に進む。
ただ、それが予想通りの方向に進むとは限らない。
突然の話題転換にもちゃんとついていかなくては。
「そうですね。休みの日でも、欠かさず剃るようにはしてます」
「それはなんのため?」
「えっと、僕の話ですよね? 世間一般の男性の話ではなく」
「一応両方の観点から聞いておこうか」
「少なくとも僕は、自分をきれいに見せるためとは思ってません。なんとなく気になりますし、無精ひげはだらしないと思うんで」
「あはは、そうだったんだ。じゃあ一般的にはどんなふうだと思ってるの?」
「剃ってる人はだいたい似たようなものじゃないですかね。剃らないで整えている人は、おしゃれと同じ感覚だと思いますけど」
お化粧とひげ剃りは似たようなものだと言いたいのかな。
いや、さすがにそんなことはないと思うのだが。
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