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「要するに、自分の好みにあわせてるわけだよね。蓮くんだって、好き好んでそうしているとは言わないまでも、剃らずに残しておくのは嫌なんでしょ」 「そうですね。そうなると、剃りたいから剃っているって言えるかと」 「じゃあさ、理由とかきっかけは置いとくとして、社会全体で男の人はおひげを蓄えることがブームになったらどうする?」  女性全員が化粧をしなくなる社会よりも想像しがたいものだった。  ひげに対してそれほどの嫌悪感はないはずなのだが、まったく想像できない。 「なんか、嫌ですね……」 「そうだね。私も考えられない。でも、おひげを剃らない人を悪く言うつもりはないでしょ?」 「それはもちろん。その人の好きなようにすればいいと思いますよ」 「そうだね。だからきっと、おひげブームがやってきても蓮くんは普通に剃り続けるんでしょう」  きっとそうだ。  流行に逆らうことをモットーにしているなんてことはないが、ここはきっとゆずれない。 「じゃあさ、もしも私が蓮くんにおひげを生やしてほしいって言ったら、どうする?」  なんと。  まったく考えもしなかった展開に思わず絶句してしまう。  今日一番の衝撃だ。  思わず不要なハンドル操作をしてしまいそうになった。
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