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「一度も言ったことないと思いますけど、よくわかりますね」 「そりゃわかるよ。だって蓮くん、目元が強烈なメイクは好きじゃないでしょ?」 「好きじゃないっていうか、圧倒されますよね。どうしてそうなったって思っちゃいます」 「ノーメイク推進派の蓮くんならそうだよね。私もごめんだけど」 「頼んだらやってくれます?」 「別にいいよ。うまくできるかわからないけど」  ここでちっとも困った素振りを見せないあたり、僕とは違うよなぁ。  何をお願いしたら千鶴さんを困らせられるだろう。 「要するにさ、好きな人に好かれるために努力することは大切なことだと思うわけ。恋人同士ってそうあるべきかなって」 「……はい」 「もちろん私だって社会人だから、人前に出るときはちゃんとお化粧するし、服装だって考えるよ。でもいつだって、蓮くんがどんなふうに見てるのかなってことは気にしてる」  何気にすごく嬉しい言葉だった。  さっきからそんな言葉をたくさんかけてもらっているのに、僕はほとんど聞くだけだ。
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