12人が本棚に入れています
本棚に追加
先輩は中島兄弟となかなか仲が良いのか、求めてもない中島情報を流してくれた。
「光は他の学校に彼女がいるんだよ」
「ふぅん」
初めて聞く話だけど、別に中島は友達じゃないし大した興味はない。私の相槌も、ついそっけないものになる。
「同じ学校に彼女がいるわけじゃないし、まわりの友達もそれを知らないから、彼女がいないと思われてる」
「それで、いいようにみんなに遊ばれてるんですね」
「そう」
おかげで、私までとんだとばっちりをくらっている。本当にいい迷惑だ。もしも話す機会があれば、一言ガツンと言ってやりたい。そんな機会はなかなかなさそうだけど。クラスも違うし、同じクラスだったとしても会話するきっかけなんて、隣の席になってもなさそう。
足音が聞こえてドアの方を見ると、ドアが開いて倉田先生が入ってきた。先輩と待っていることが当たり前になってきて、最初のうちは毎度先輩を茶化していた先生も、先輩がいることに触れなくなった。
「あら、早かった?」
先生が少しだけ眉を上げて先輩を見る。
「いいえ、ずっと待ってましたけど」
先輩は何も言わないので、私が代わりに返事をすると、先生は「ふーん」と言ったきり特に何も言わなかった。
倉田先生は窓と机をさっと見回して、片付けがしっかり終わっているのを確認している。
先輩は今日も、先生が部屋の中を確認している間に廊下に出ていってしまった。倉田先生も私も、先輩を引き止めたりはしない。
「じゃ、私たちも出ましょうかね」
「はい」
「今日もおつかれさま」
倉田先生は鍵を閉めながら、「そういえば」と試験の話題を振ってきた。
「メイちゃんはちゃんと宿題もやってくるタイプだし、ここで勉強もしてるみたいだから、今度の期末試験は大丈夫そうかな?」
「初めての試験なので、どうでしょう」
まだ小テスト以外の試験を受けたことがないので、あいまいにしか返事ができない。塾でも勉強はしているし、今までも成績が悪い方ではなかったから、期末試験もそこそこできるんじゃないかと自分で期待はしてる。でも、そんなこと先生に言って、実際の結果がともなってなかったら恥ずかしい。
最初のコメントを投稿しよう!