日陰に咲く

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 図書委員の当番を始めて一週間が経ったけど、中島は一度も来なかった。やっぱりサボりみたい、とカナが言っていた。私にとっては大変都合がいい。  貸し出し受付けも今のところ一回もしていない。図書室に来ているのも毎回数人だけ。みんな勉強をしに来ているらしい。私も毎日、当番をしながら自分の勉強をしている。  二週目に入ると、毎日来て、毎日同じ席に座っている人がいることに気づいた。前髪が目隠しとなっているのをいいことに、じっくりと観察させてもらう。上履きの色が青いから、あれは二年生だ。色白で、男子だけど女子より細い腕をしている。立つとすごく背が高かった。メガネをかけた姿がいかにも目立たない男子っぽく見える。いつも問題集を広げて勉強している。他の生徒も勉強をしているけど、その先輩だけは誰よりも集中していて、隠し持ったスマホをいじったり、爪を気にしたり、何度も頭を上げたりしなかった。  結局誰にも本を貸し出さないまま、私の当番は終わった。  当番が終わったあとも、塾がある日の放課後は図書室に通うことにした。当番をしている間に、ここが一番涼しくて静かで、一人でいても不自然じゃない場所だと気づいたから。  例の先輩がいつも同じ席に指定席のように座っていることを知ってしまったら、何となくその近くには座りづらくて、少し離れた席に座るようになった。たぶん、先輩がいつも座ってる席はこの部屋の特等席だ。窓から少し離れた一番奥の席は、外からの風が心地よく、校庭で練習している部員の声も少し小さく聞こえる。
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