日陰に咲く

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 図書室通いのあいだに、当番なのに来ない委員がかなりいると知った。みんな図書室に来る人はほとんどいないからって、サボっているみたい。中には本当に忘れている人もいるだろうけど、とにかくカウンターに人が座っていることの方がまれだ。  誰もいないなら、カウンターに座っちゃおうかな。そう思って、当番の人がいない日は、カウンターに座るようになった。カウンターはアクリル板で仕切られていて、一人でこもっているような感覚がして落ち着く。  図書室はいつも数人しか人が来ない上に、みんな自分のことに集中しているため、人目を気にしなくていいのが良かった。ここにいる間は前髪を留めてても大丈夫だと思えて、勉強している間は邪魔な前髪を留めることにした。この数週間で一気に、図書室が学校で一番落ち着ける場所になった。  もうすぐ戸締まりの時間だ。委員の私より遅く残っている生徒はいない。みんな、戸締まりの十分前までに退室するルールを守っている。 「今日もメイちゃんが当番やってくれてたの?」 「倉田先生」  図書室の見回りに来た倉田先生は、部屋にずんずん入ってくると、端から窓を閉めていく。倉田先生は図書委員会の担当教員で、毎日図書室の見回りと戸締まりをしに来ている。委員のみんなが当番に来てないことは、ずっと知っていたはずなのに、委員会でそれを指摘したことは一度もなかった。 「先生、どうして委員会のときに当番のこと、みんなに注意しないんですか」  カーテンを閉めるのを手伝いながら、別に不満に思っているわけじゃないけど聞いてみた。倉田先生は「えー?」と部屋の反対側で大きな声で返事をする。 「だって、注意したところで変わらないじゃない。どの年もみんな、図書委員の仕事ってやりたがらないのよね。それに、当番がいなくてもあんまり人がいないから困る人もいないし。みんな勉強ばっかしに来て、本を借りに来る人ほとんどいなかったでしょ?」 「そうですね」 「メイちゃんもさ、ずっと当番代わってくれなくてもいいよ」  小柄な倉田先生は、私を見上げながら小さく眉を上げて肩をすくめた。まるで外国人みたいな仕草にちょっとだけ笑ってしまう。 「毎日来てるわけじゃないし、来た日に当番がいなかったらラッキーと思ってカウンターに座ってるんです。カウンターの方が落ち着くから」 「個人スペースっぽいもんね、ちょっと分かるわ」  すべての窓とカーテンを閉め終えると、倉田先生は図書室の電気を消した。
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