日陰に咲く

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 今日から図書委員の当番がある。二週間ずつ、図書室のカウンターで本の貸出受付けの仕事をする。二人一組で当番をすることになっているのに、図書室のカウンター席に座って何分たっても、私の相棒はやってこなかった。 「ふぅ」  今日はもう相棒は来なさそうだと思ったら、緊張がとけてため息が出た。仕事をすっぽかしてるんだからいいことではないけど、今日のことを忘れてくれた彼には感謝したい。いかにもクラスの中心人物といった明るくてお調子者な男子は苦手で、二人でこの静かな空間にずっと座っているなんて考えただけで胸のあたりがずっしりと重たくなる。  入学してから図書室に来たのはこれで四回目。最初は校内見学のとき、二回目と三回目は二週に一度の図書委員の集まりのときだった。放課後、委員会以外の日にここに来るのは初めてだけど、いつもこんなに人が少ない場所なんだろうか。ずらりと長机が並べられているけれど、席は三つしか埋まっていない。校舎のなかで一番陽が当たらない場所にあるからか、窓辺以外は薄暗くて、外が明るくても電灯が必要だった。  受付けカウンターに座ると、目にかかる長い前髪の隙間から様子をうかがってみる。三人はそれぞれ勉強していて、私に見向きもしない。もしかしたら、本を借りる人はいないのかも。そう思ったら、さらに安心してきて、私も自分の宿題をカウンターに広げた。  結局その日は、だれも本を借りに来なかった。
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