15人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「晃さ、俺たちもう何年の仲になると思ってんの?」
「えっと、高校の頃からだから、かれこれ十四年?」
「そう、十四年!もう十四年だぞ?さすがにもうお前が何考えてるかくらいはわかるさ」
「本当に?じゃあ今、僕が何を考えてるかも」
「ああ、わかる。そうだな、今はあれだな?俺たちが出会った頃のこととかか?」
どうしてわかるのだろう。晃は雄二を前にすると、不思議な気持ちで見入ってしまう。
「あの頃さ、晃、めっちゃ無理してたもんな?」
雄二が言う『無理していた』とは、入学当時の苦い思い出だ。
人生をやり直すべく晃は暗くて陰気な自分を捨て、陽気なフリをして誰彼構わずにとにかく話しかけまくっていたのだ。
数打てば当たる。きっと晃は失礼ながらもそんなことを思っていたのだろう。
『ねえ、名前は?』
『友達になってくれる?』
唐突に話しかけられれば、誰しもが警戒するだろう。結局、人間関係にヒビを入れたのは他ならぬ自分自身となった。
そんな晃を見兼ねたのか、新たな人間関係作りのチャンスを自ら逃し、意気消沈している晃を救ってくれたのは、目の前の不思議なオーラを放つ雄二だった。
ニコニコしているわけでもなく、けれどその場にいるだけで周りを明るくさせ、人を前向きにさせる。
外見は特別目立つわけでもないのに、人を惹きつける。話してみたいと思わせてくれる。
『俺、隣の席の板倉雄二。よろしくな?』
それが晃が雄二と会話をした最初の一言目だった。
「あの時のお前、必死だったよな」
「お願いだから、あの時のことはもう口にしないでくれ…」
「え?なんで?あの時があったからこそ俺たち友達なんじゃん?」
そんなこと関係ないだろ?というように笑う雄二は、妻である陽向の実家が経営している喫茶店『陽だまり』の後を継いでいる。
妻の陽向とは晃も友人で、高校の頃から今も仲が良い。
「まあ、たしかに」
「だろ?だからなんも恥ずかしいことなんてないんだって」
高校の頃から変わらない人並外れた明るさとポジティブさに引っ張られ、気付けば晃もふっと笑みを零していた。
「それで、本当は何考えてた?」
「え?さっき言ったけど」
「俺が聞く前だよ。晃、お前すぐに別の世界に行っちゃうだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!