想定外な出逢い。

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もしかしたら、晃自身よりも晃のことをわかっているのは、雄二なのかもしれない。 そう感心しつつ、晃はさきほどのどうでもいい話を雄二に言って聞かせた。 「どう思う?雄二は」 「そうだな、俺は信じないかな」 やっぱり、と思った。というのも、雄二は目に見えないものを信じるタイプではないからだ。 目に見えるものだけを信じる、ある意味、現実主義は高校の頃から変わらない。そういうところが好きだ。 やはり、という顔をするのは失礼なのかもしれない。と、敢えて顔の表情筋を引き締め、雄二を見た。 「いいよ、そんな顔しなくても。どうせ晃のことだから、やっぱりとかおもっやらダメだろうなって思ったんだろ?」 ああ、どうしてこいつにはわかってしまうのか。やはり雄二は魔法使いかもしれない。 晃は動揺する気持ちを落ち着かせようと、冷めかけた紅茶を一口、ゆっくりと飲む。 「雄二はどうしてそう思ったの?」 「ん~なんとなく?奇跡ってさ、要するに偶然の積み重ねみたいなものじゃん?それが自分にとって望むものであれば、人は奇跡と呼ぶんじゃねーかなって」 「そっか。なんか深いね」 「そうか?それより晃は信じる派だろ?」 いつの間にか二杯目のカフェオレを頼んでいたようで、店員が運んできてくれた湯気の立つカップを笑顔で受け取り、テーブルにそっと置きながら雄二が聞いた。 そして多分、本人は気にしているつもりもないだろうが、ぐっと目に力を込めた瞳の眼力は鋭い。まるでライオンに狙われたウサギの気分だ。 大きな猫目がそうさせているのだろうか。 時々、その視線に怖さを感じることは雄二には秘密にしておこうと思う。 店に入って三十分。熱々だったティーカップの紅茶はすっかり冷めてしまっている。 少しずつ、店に賑やかさが見えてきた。 今日は平日の月曜日だ。先週、休日出勤をした分、代休が入った。 雄二の経営する喫茶店もちょうど、定休日だったため、駅の近くにある昔ながらの喫茶店に足を運べたのだった。 週初めの月曜日ということもあるのだろうが、この喫茶店は静かだ。 ここを訪れるようになったのは社会人として働き始めてすぐの頃だったが、いつ来ても静かで落ち着く雰囲気が晃は好きだった。 客はいつもまばらで、大抵は年配の方が多く、若い人達が集うファミレスのように賑わってはいないが、静かな雰囲気は都会の喧騒を忘れられる。
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