1人が本棚に入れています
本棚に追加
2
さて、会社をやめ、ミニロトを買うだけで、遊んでいてもお金が入ってくると、とっても楽しい。
かというと、そうでもなかったのです。
年収にして、七百から八百万円の収入。同世代のサラリーマンと比較して、断然の高給取り。
でも、心が満たされなかったのです。自分が、社会からはじき出されたような気がしたものです。
たぶん、まともな仕事をしていないからだと、ぼくは気づきました。
まともな仕事というのは、「人さまから感謝されて、お金をいただく」行為だと思うのです。
たとえば、お百姓さんはお米を作り、消費者から、
「おいしいお米を作ってくださって、ありがとう」
と感謝されて、お金をいただく。
あるいは、歌手ならば歌を唄い、視聴者から、
「いい歌を聞いて、気持ちよくなれた。ありがとう」
と感謝されて、お金をいただく。
きれいごとと言われるかもしれないけど、そういうものだとぼくは思うのです。
ぼくの場合で言うと、以前勤めていたのは、大手の事務用品メーカーの下請けで、事務器具を組み立てる工場でした。ぼくは毎日組み立てた器具の検査を行っていました。地味でつまらない仕事でしたが、お店で自分が検査した器具が売られているのを見ると、誇らしかったものです。
そして、お客さまがその器具を買って、
「とっても便利だね。ありがとう」
と感謝して、払ってくださったお金が、親会社から子会社へまわってきて、ぼくの給料になっていたのです。
そういう誇らしさを、ぼくは手放してしまった、というわけなんです。
じゃあ、またサラリーマンにもどればいいじゃないか、と言われるかもしれません。
ええ、一度、派遣会社に登録して、とある工場で働いてみたのです。
でも、だめでした。
遊んでいてもお金が入ってくる、と思うと、地味な作業は苦痛で、続けることができなかったのです。
結局は、働くのをやめてしまったのでした。
最初のコメントを投稿しよう!