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 さて、会社をやめ、ミニロトを買うだけで、遊んでいてもお金が入ってくると、とっても楽しい。  かというと、そうでもなかったのです。  年収にして、七百から八百万円の収入。同世代のサラリーマンと比較して、断然の高給取り。  でも、心が満たされなかったのです。自分が、社会からはじき出されたような気がしたものです。  たぶん、まともな仕事をしていないからだと、ぼくは気づきました。  まともな仕事というのは、「人さまから感謝されて、お金をいただく」行為だと思うのです。  たとえば、お百姓さんはお米を作り、消費者から、 「おいしいお米を作ってくださって、ありがとう」  と感謝されて、お金をいただく。  あるいは、歌手ならば歌を唄い、視聴者から、 「いい歌を聞いて、気持ちよくなれた。ありがとう」  と感謝されて、お金をいただく。  きれいごとと言われるかもしれないけど、そういうものだとぼくは思うのです。  ぼくの場合で言うと、以前勤めていたのは、大手の事務用品メーカーの下請けで、事務器具を組み立てる工場でした。ぼくは毎日組み立てた器具の検査を行っていました。地味でつまらない仕事でしたが、お店で自分が検査した器具が売られているのを見ると、誇らしかったものです。  そして、お客さまがその器具を買って、 「とっても便利だね。ありがとう」  と感謝して、払ってくださったお金が、親会社から子会社へまわってきて、ぼくの給料になっていたのです。  そういう誇らしさを、ぼくは手放してしまった、というわけなんです。  じゃあ、またサラリーマンにもどればいいじゃないか、と言われるかもしれません。  ええ、一度、派遣会社に登録して、とある工場で働いてみたのです。  でも、だめでした。  遊んでいてもお金が入ってくる、と思うと、地味な作業は苦痛で、続けることができなかったのです。  結局は、働くのをやめてしまったのでした。
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