挨拶は大事。

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挨拶は大事。

 明るい空にひらひらと光の粒が舞う。 真思の正月休み最後の日は、冷たい風が吹いていた。  夜ご飯に煮込みうどんを作ろうと思い立って充之にメッセージを送る。冷蔵庫の整理もできるし、なにより温まるのがいい。  昨夜送られた言葉を思い返していた。 『もう離れたくない』  男女のカップルならプロポーズかと思うだろう。でも真思は違う。ならば特に意味はないのだろうか。  家族に恋人の存在を認められた自分は幸せだ。交際を迷って肩を震わせた充之を思い出す。手のひらにこめた気持ちが伝わっているといいなと思う。  真思にとっての充之がそうであるように、前を向く勇気を与えられる関係でいたい。    高校生の自分に、充之と付き合っていると教えたらきっと死ぬほど驚くだろうな、想像して可笑しくなる。 『寒い!うどん食べたい!帰る前に連絡する』 仕事中なのだろう。用件だけのメッセージが届いた。  土鍋に肉と野菜、さらに卵とうどんを入れ調味料と煮立たせる。材料も調味料も大雑把なメニューだが真思はこんな料理が好きだ。充之はどうだろう。年末に作ったおでんは喜んでくれたけれど。  誰かに食べてもらうために料理をするのは、やっぱりまだ緊張してしまう。    でもこんなくすぐったいような瞬間を毎日、毎時間積み重ねていたいとも思っている。  
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