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「おかえり」
冷たい空気を身体に貼りつけている充之を、いつもと違う挨拶で迎える。
「た、だいま」
忘れていた表情をやっと思い出したみたいに笑った。照れている。
彼は自覚がないようだけれど、意外にもわかりやすく顔にでる。
自分をしっかりと持って他人に流されないタイプだと思っていた。真思の胸はちょっとした瞬間の彼の表情に、そのたびにきゅっとなる。
昼間から楽しみにしていたと、土鍋をテーブルに運んでくれた。
「ごめん、残り物ばっかり入ってるんだけど」
いつも以上に嬉しそうでなんだか申し訳ない。
「すごいうまそうだよ。早く食べようぜ」
特売の小間切れ肉と油揚げ、ストックの長ネギ、人参、きのこをドバっと入れた出汁に冷凍うどんと卵、今日は残っていた餅も入れた。味噌で味付けて、醤油と胡麻油をちょっとだけ垂らしている。真思は取り皿を手にするふりをしてこっそりと窺った。
よほど空腹だったのか、ふーふーと言いながら食べている。鼻の頭が少し赤くてかわいい。
顔を上げた充之と目があった。
「がっつきすぎかな……」
顔いっぱいを赤くしている。
「おいしそうに食べてくれて嬉しいよ」
額の汗は、温かい鍋のせいばかりではないと思う。
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