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最後にとろみをつけた雑炊まで食べてふたりとも満腹だ。
充之は自分の役目とばかりに後片付けを始める。最初の頃は気が引けた真思も甘えて任せることができるようになった。
「うまかったよ、ごちそうさん」
「かたづけ、ありがと」
このやりとりにも慣れたと思う。
「なぁ、今日泊まったらだめかな」
片づけ終えた充之に聞かれて今度は真思が顔を赤くした。
「変なことはしないから!約束するから!!」
明日が仕事初めの真思への気配りだろう。必死な顔をしている。嬉しいと思った。
ちょっとだけ残念な気持ちもあったけれど、交替で風呂に入る。充之に髪を乾かしてもらってベッドに向かった。
狭いから必然的に距離が近いのに、充之はきちんと約束を守ろうとしてくれているようだ。やっぱり嬉しくて、真思のほうから抱きつき腕の中に収まった。充之が髪の毛に口づけてくれる。少しひそめた声が聞こえた。
「さっき、おかえりって言われてすごく嬉しかった。また言われたいって思った」
学校から帰ってもひとりだったからね、と笑っている。
「マコトと一緒に暮らしたい。すぐじゃなくていいから。マコトが大丈夫なタイミングを待つから」
「じゃあ可及的速やかにお願いします。あ、でも挨拶には行かないとね」
「え?いいの?大丈夫なの?」
充之が身体を起こして正座をした。変なことを言ってしまったのかと真思も座り直す。
「もっと、ちゃんと考えなくて大丈夫?」
「え?僕、何か勘違いしてる?」
「一緒に暮らすんだよ?」
「同棲だよね?」
一瞬、黙り込んだ充之が真思を抱きしめた。大きく息を吐いて腕に力をこめる。真思も自分よりずっと厚みのある背中に腕を回した。充之の熱を感じる。
「ありがとう……」
「僕もありがとう……」
しばらく無言で抱きあっていたが、身体が冷えてきて真思がくしゃみをした。慌てて横になり、布団の中でもう一度抱きしめあう。
「今度こそきちんと挨拶にいくよ」
充之の声に頷いて、幸せな気持ちで目を閉じた。
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