不確かで揺るぎない。

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 朝から充之が運転する車で実家へ向かっている。  二人とも有給休暇がたまっていたから2日間の休みを取った。本来なら理由を説明する必要はないけれど、恋人の親に挨拶にいくと話した。 「結婚するわけでもないのに挨拶いくのか?」  予想通りに聞かれて、きっぱりと答える。 「結婚したいと思っているので」 「そっか。まぁ最初が肝心かもな。将来家族になるならそのほうがいい」  どちらの上司も既婚者で覚えがあるのだろう。1日だけでもと思っていたがシフトをやりくりして連休をくれた。充之の職場で日曜日が無理だったので金曜と土曜になってしまい逆に謝られる。    これまで気にしたことはなかったが、いい上司や同僚と働けていると思った。    職場にどこまで伝えるか、二人で話し合った。いまは同性であることは話さない。自分たちを守るためだけでなく、嫌悪するひとがいるかもしれないと慮ったから。でも結婚をしたい相手であると伝えるのは嘘ではない。自分とは無縁だと二人とも考えていたので制度や手続きをこれから調べなければならないが、できることはやろうと決めた。    大切にしたいひとがいる、その幸せを諦めないためだ。  その上で充之は本間先輩に真思のことを打ち明けた。付きあい初めの頃、背中を押してくれたのだと聞き真思も同意してくれた。 「そっか、おめでと!で、ご祝儀はいつ渡せばいい?」 「え?要らないですよ?結婚するわけじゃないし」  展開が早すぎてついていけない。残念そうな顔をされる理由がわからなかった。 「同棲するんだろ?総務に同期がいるから手続き聞いといてやるよ」  やはりこの先輩には敵わない。お願いします、と精一杯頭を下げる。    祝儀代わりに奢ってやると言われて、居酒屋を出た。 「先輩にもいつか祝儀渡したいです」  つい言ってしまったのは本心だった。
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