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 一方の充之は、真思を手伝って家事をするのを楽しんでいた。  慣れた皿洗いも洗濯も、真思が喜んだり感心してくれるだけで、ご褒美を貰ったみたいな気分になる。 「仕方なくやってたことが、役に立ってるな」  充之を知る友人などに聞かせれば「どんな心境の変化だ?」と驚かれるだろう。それほどまでに、何をするにもどうでもいいような顔をしてきたのだ。  休みの日、真思に代わって夕食を準備するときは何を作れば驚くだろうかと考える。 スーパーで見かけた、業務用みたいな冷凍食品のタコ焼きを大量に出したこともある。 真思がソースを味変したり、チーズを追加したりと、一緒にわいわいと楽しんでくれた。 「笑いながら食べると旨いんだな」    いまさらだけれど、とても幸せな発見。  そしてそれが、隣に寄り添う真思に向かっていく。  
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