ゆく年の俺たちは。

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「確かに時間はないけどご飯食べたりはしてるんで大丈夫です。欲求不満でもありません」 「それならよかった。でもなんでそんな不安そうな顔してんだよ。浮気でもされちゃいそうなの?」 「そんなことある訳ないです!そんな奴じゃありません!」 「ふーん、ならお前の方?ビビってるの?」  何を言われたのかよくわからなかった。ビビる?俺が? 「お前は元々ちょっと壁作ってる感じだから、踏み込まれて引いてるのか、相手に嵌りそうで躊躇ってるのかと思ってさ」  今度こそ俺は固まってしまった。多分口も開きっぱなしだったのだろう。先輩が吹き出した。 「そんな図星ですみたいな顔するな。別に悪いことじゃないし」 「でも特別な人間とは壁を取っ払って付き合うのもありだよ。好きなんだろ?」  俺はなんにも言えずにこくこくと頷いた。 真思に嵌ってるという先輩の言葉がじわじわと染みてくる。そしてたまらなく嬉しくなってきた。 「そうですね。もっと踏み込んで付き合ってみます。大好きなんで」 「うわ!急にリア充だしてきた!それなら明日からもっと仕事させるからな」 「え、今日だって昼飯抜きで頑張ったのに、これ以上ですか?!」  俺の泣き言に先輩が嬉しそうな顔をした。  先輩からの有り難いアドバイスを受けて、俺は仕事に励むことにした。色恋にうつつを抜かす男だ、なんて言われたくないから。    真思にはカッコ悪いところも全部見せよう。時期的にも忙しいが、任される仕事が増えて余裕がない。新しく覚えることがたくさんあった。でも何より真思のことを考えている。そんな気持ちも包み隠さず伝える。真思はきっと俺のことを受け止めて、自分の気持ちを返してくれる。疑いもなく信じる気持ちが、俺を内側から支えてくれる。  寒さが厳しくなってきてひらひらと白い粒が舞うなか、笑顔を思い出して自分を鼓舞する日が続いた。
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