サラマ小平原

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サラマ小平原

「あのぉ」 ふいに女性から声をかけられた。 「助けて頂きありがとうございます。」 見ると、先ほど助けた5人が頭をさげている。 「いえいえ。たまたま通りすがっただけで、他に捕まっている人はもういないですか?」 「私達だけだと思います。以前はもっといました。けれど、あの牢のおくにキングオークの部屋があるのですがあそこに連れていかれた方達はもう…亡くなられているかと思います。」 気まずい空気が流れる。 「変わった身なりをしていますが、旅の方ですか?」女性達は空気を変えようと話題を切り替える。 特に変わった格好をしている自覚は無いが、 中世ヨーロッパのような服装の女性達と比べると学校の制服である自分の身なりは変わっているのかもしれない。 「旅人ってことはないですけど、自分でも知らない間に森の中の小屋にいまして、食べ物か街を探しているところで君たちがオークに連れていかれるのを見まして…」 「そうでしたのですね。経緯はどうであれ助けて頂いてありがとうございます。この道をまっすぐ行き、山を越えれば私達の街があります。あまり裕福ではないので大したお礼は出来ませんが、助けて頂いた御恩は感謝しきれません。精一杯おもてなしさせて頂きますので、是非ご馳走させて下さい。」 こうして街を目指すことになった。 「ここは何という国ですか?」 道中聞いてみる。 「ここは《ソハラ》の国です。その国の中の《セントパーク》という街が今向かっている私達の街です。」 《ソハラ》聞いた事の無い国だ。 「あと今何年の何月ですか?」 「アグリフォード暦22年のアリエス月の13日です。」 アグリフォード暦?アリエス月? 聞いた事の無い暦だ。 やはりここは元いた世界とは全然別の異世界か? 「あのぉ、失礼ですが、お名前は? キングオークを倒せるなんて名のある冒険者様なのでは?」 女性達からも質問される。 「コウイチと言います。冒険者とかではなく、ただの学生です。」 「ただの学生がキングオークを倒せるわけありませんわ。無詠唱で上級魔法…しかも複数属性をお持ちのようですし…まぁ命の恩人にあれこれ詮索するのも野暮ですわね。」 あれこれ話しをしながら道を歩いていると 途中、何体かのモンスターと遭遇した。 角の生えたうさぎは《一角うさぎ》 毒々しい緑に青の水玉模様の鹿は《サラマ鹿》 というらしい。 他にも体長が1m程ある《ジャイアントアント》、背中に草が生え、草むらに擬態する《グラスフロッグ》。 いずれも初級魔法で倒せるレベルだった。
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