BAR『かげろう』2

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 夜の大阪……  空は曇っていた。  その南の端の、なんとも言えない寂しい通りで‥‥  タクシーは止まった。  降りたのは若い女だった。  彼女は、心に穴の開いた者が思わず入ってしまうような路地に、入っていった。  その奥に建つ古いFビルまで行くと、女はドアを開けた。  中は薄暗く、奥に可成り古いエレベーターがあった。  海外のホテル等にあるようなエレベーターで、扉は無く鉄製のシャッターがあるだけという、奇妙な不気味さがあった。  女は少しためらいながらも、乗り込んだ。  エレベーターは勝手に昇りだした。  まるで異世界にでも向かっているような思いを女は感じていた。  数階、通過してエレベーターは止まった。  その正面に、BAR『かげろう』と表記された、黒いドアがあった。
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