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夜の大阪……
空は曇っていた。
その南の端の、なんとも言えない寂しい通りで‥‥
タクシーは止まった。
降りたのは若い女だった。
彼女は、心に穴の開いた者が思わず入ってしまうような路地に、入っていった。
その奥に建つ古いFビルまで行くと、女はドアを開けた。
中は薄暗く、奥に可成り古いエレベーターがあった。
海外のホテル等にあるようなエレベーターで、扉は無く鉄製のシャッターがあるだけという、奇妙な不気味さがあった。
女は少しためらいながらも、乗り込んだ。
エレベーターは勝手に昇りだした。
まるで異世界にでも向かっているような思いを女は感じていた。
数階、通過してエレベーターは止まった。
その正面に、BAR『かげろう』と表記された、黒いドアがあった。
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