星の降る夜、音のない世界で、君の声を

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私は、今日もコンビニで夕ご飯のお弁当を買った。誰もいない家で食べるなら、公園で藍色の空を眺めながら、大好きなキラキラ光る星を眺めようと思った。 制服姿のまま、ローファーを鳴らしながら、コンビニからすぐの、小さな公園にたどり着く。公園に設置してある丸い文字盤の針は、ちょうど、夜8時を指していた。 公園には、丸型の砂場と、ブルーの塗装がところどころ剥げてしまった格子型のジャングルジム、座席の2つしかない小さなブランコが並んでいて、灰色の横長スチールベンチは、一つだけ、公園の端に置いてある。 大きな樹の陰にある、いつものスチールベンチに向かった私は、直前で足をとめた。 樹の陰でわからなかったがーーーー今日は、先客が居たから。   えっと……どこだっけ。淡い藍色のチェックのズボンに上は白のシャツ、同じ藍色のチェックのネクタイは緩められて、飾り程度にぶら下がっている。 確か、隣町の私立高校の制服だと思うが、自信はない。私は制服につけていた『戸田』の名札を外してポケットに入れた。とりあえず、私と同じ学校でないことにほっとする。夜に一人公園でコンビニ弁当を食べてる自分を、同じ学校の子には、絶対知られたくない。 そこまで考えてから、小さくため息が、(こぼ)れた。ほんと、私はちっぽけなプライドしか持ってない、ちっぽけな人間だ。 「何?座りたきゃ座れば?」  私の影に気づいたのか、ぶっきらぼうな声がなげかけられた。 柔らかそうな黒髪を夜風に靡かせながら、膝に広げた本から視線を上げずに、彼は声を発した。長めの前髪で顔は、よくわからない。彼はこちらを見ようとよせずに手元の本のページを捲った。 その行動、表情ひとつとっても、愛想の欠片もない。別に愛想良くして欲しい訳では勿論なかったが、座りたかったベンチを先に越されたことに、むしゃくしゃした。 ーーーー()感じ。 私の彼への第一印象だった。
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