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一週間経つと「アンティーク同好会」も落ち着きを取り戻した。
折しも秋の学祭の催物を決めなければならない時期だったから、いつまでも失くなったビスクドールの話ばかりしていられないようだ。
誠也……。
何も変わらない様子にホッとしたけど、最近では飲み会を断わりがちだ。
だから、居酒屋に現れた誠也にテンションが上がった。
みんなの話を聞いているフリをするのは、結構辛い。
誠也もぼんやりとしている。
退屈な飲み会がやっと終わり、誠也と二人で夜を駆ける。
終電なんかどうでもいい。
誠也となら、どこまでも何処へでもついて行ける。
私を抱けば、人形のことなどすぐに忘れる。
そうでしょう?
デートなのにツイてない。
アンティークショップを探して、1時間以上歩いている。
空を見上げると、今にも降り出しそうだ。
おろしたてのハイヒールが擦れて痛い。
「あった……あの端のとこ」
ドアを開けると、ひんやりした店内に生き返る。
カビ?埃?部室とよく似た臭いに、思わず鼻をしかめた。
だから古いものは嫌い。
アンティーク家具と名乗っても、所詮は中古品。
お値打ち品でいいんじゃない?
「誠也、このテーブルで──」
隣にいるはずの誠也がいない。
振り返ると、奥の薄暗い棚の前に立っていた。
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