レディドール

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レディドール

髪から雨の雫を滴らせ玄関を開けると、やっぱりソレはいた。 バラバラになった身体を起こしながら、私を見てニヤリと笑った。 「誠也ガ スキ。愛サレタイノ」 腹の底から笑いが込み上げてきた。 そんな姿で、誠也に愛されるとでも思っているのか? 誠也はもう、あの高慢な白いドレスのビスクドールに夢中だというのに。 「ねぇ、もう一度誠也に愛されたい?」 私は挑むように人形に問いかける。 「愛サレタイノ」 壊れたその顔が、どうしても自分と重なってしまう。 いつまで待てば愛してくれるの? このまま相手にされないままなの? 誠也が人形しか愛さないなら……。 「……私と一緒にならない?そして一生誠也を離さないの」 ずっと美しく、ずっと飽きない、誠也を満たして離さない人形に。 「愛サレタイカラ 一緒ニナッテアゲル」 人形が私の腕の中におさまり、ゆっくりと目を閉じる。 足元から、炎が蛇のように巻き付いてきた。 ずぶ濡れだった身体から、1300℃の炎が一瞬で水分を奪っていく。 昔のビスクドールが二度焼きするのは、人間の肌に近い質感にする為だ。 さらに高温の炎が、残っていたワタシの部分を焼き尽くした。 絶叫は、人間としての最後の未練だ。 境界。 そんなものを越えるのは簡単だ。
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