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一方で部員が少ないサークルは、存続を賭けた強引な勧誘になっていた。
ツワモノ共に腕を取られては振り払い、脱出し続けていた僕は、木陰で佇むカノジョを見つけた。
音がなくなり、視線が絡み合う。
カノジョだけは、この喧騒を嘲笑うかのように佇んでいた。
──ようこそ、アンティーク同好会へ。
離れていても聞き取れた。
カノジョの唇が、そう言葉を紡いだのを。
この瞬間、僕はカノジョに恋をした。
もちろん、カノジョのいるアンティーク同好会に入ってそして──。
「誠也!……誠也ったら!」
ハッと顔を上げると、顔をほんのり赤くした桃花のふくれっ面があった。
甘い記憶は、下品な喧騒に掻き消される。
「誠也と桃花は、学祭に使う家具を見に行ってくれ。何度も言うが、セットで売っているものはだめだからな」
部長の口癖だ。
アンティーク家具のセット売りは、いわく付きってやつ。
「なぁ、部長。この前ネットオークションで、かなり年代物のビスクドールが出てたぞ?やばくね?」
「ネットで売買されているのは、ほとんど偽物だ。手を出すなよ?」
今年の学祭に、アンティークカフェをやるらしい。
みんなノリノリで早くから準備を始めている。
僕だけが、もういないカノジョの追憶に囚われたままだった。
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