水取桃花

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水取桃花

誠也が好き。 高校時代からずっと好きだった。 誠也がサッカー部に入れば、私はマネージャーとして入部した。 誠也がこの大学を受けたから、もちろん私も。 誠也が誰かに告白されたり、付き合ったりしても大丈夫。 全部壊してあげたから。 どんな手を使ってもね。 誠也の傍にいれば、いつか必ず私が愛される。 私だけの誠也になる。 私の計画は順調だったのに。 「サークルなんか面倒……」 そう言っていたのに、入学2日目でサークルに入った。 しかも、よりによって「アンティーク同好会」って何? 慌てて私も入部したけど、薄気味悪いアンティークドールがトレードマークの、オタクばかりの面白くない場所。 サッカーボールを追いかけていたかっこいい誠也が、どうしてこんな埃臭い所にいるのかわからない。 毎日熱心に通うから、部長のお気に入りになっているし。 この狭い部屋に不釣り合いなガラス戸棚に飾られたビスクドールを、毎日毎日手入れしている。 掃除やアンティーク家具の手入れは新人の仕事とはいえ、あんなに真面目にすることないのに。 この「アンティーク同好会」には、女子が私を含めて3人いる。 誠也の狙いは誰だろう。 必ずあぶり出してやる。 まずは黒髪美人の副部長、篠崎和香からだ。 いつも二人で、あの気味が悪いビスクドールの話をしている。
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