【02】 自分のための選択

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教室に入ると、後方で男子がふざけあっているのが目に留まった。 「あれは…」 いわゆる、プロレスごっこだった。 男子たちに技をかけられて、悶えているのが、私を助けようとして標的にされた彼――愁斗(しゅうと)くんだ。 「ギブ…!ギブってば!」 「おい愁斗、嘘だろ?まだまだ序の口だっつーの」 抵抗する愁斗くんに、ガタイのいい男子が技をかける。 首を脚で挟まれた愁斗くんの顔が、だんだん青ざめていく。 「ちょっと!」 声をかけるのは怖かった。 でも、止めなきゃ――という思いで、私は愁斗くんの元に駆け寄っていた。 「何だよ、川谷。こっちはプロレスごっこで遊んでんだよ、邪魔すんな」 「愁斗くんは、遊んでるって思ってる?」 「だからぁ…」 「アンタには聞いてない!私は愁斗くんに聞いてるの」 今まで口を開かなかった私が、早口でまくしたてたのに驚いたのか、いじめっ子たちが黙り込む。 「遊んでない。こんなの遊びじゃない」 愁斗くんが言った。 男子が舌打ちする音が聞こえた。 「川谷のくせに邪魔すんなよ」 「そっちだって、同級生のくせに偉そうにしないでよ」 恐怖を押し殺して反論した途端、男子のひとりが殴り掛かって来た。 咄嗟に、近くにあった誰かの体育館シューズが入ったケースを掴んで投げつける。 それが顔に命中して、彼は後ろ向きに転んだ。
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