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【03】 メメント・モリ
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい」
愁斗くんがほほ笑んだ。
それから、深呼吸して、寂し気に笑う。
「でも、ここに一緒にいたら小春ちゃん、またいじめられるかもしれないよ。教室に戻った方がいい」
「戻らないよ」
私は首を振って答えた。
彼が少し困惑の表情を浮かべる。
「いじめられたって平気だよ。愁斗くんが一緒にいてくれたら」
「え」
「だってそしたら、孤独じゃない」
タイムリープ前、社内でどこにも居場所がなかった私は、ずっと心の中で思っていた。
私の他にもうひとり、誰かいてくれたらいいのに。と。
ひとりぼっちは寂しい。孤独は嫌だ。
でも――
「ひとりぼっちでも、もうひとりのひとりぼっちが一緒にいたら、2人なんだから」
ふたりぼっちでいいじゃない。
私の言葉に、愁斗くんが声を押し殺して笑った。
「そうかもしれないね」
「私、どんな時でも何があっても、愁斗くんの味方だからね」
たとえ、未来の愁斗くんは救えないとしても。
今の愁斗くんの心が、少しでも救われてくれたらいいな。
愁斗くんが大きく頷いた。
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