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「部署内での嫌がらせ、何で俺に相談してくれなかったんだよ」
愁斗くんの言葉に、疑問符が浮かぶ。
「何で…って」
そりゃ、タイムリープ前は愁斗くんもういなかったし。
今だって、何でここに愁斗くんがいるのかまるで理解できない。
「ここは俺の新しい両親の会社だぞ。俺に相談してくれれば、解決できたのに」
愁斗くんの話によると、私が愁斗くんを救った後、両親と距離を取って児童養護施設に預けられたらしい。
それから、里子として今の両親と養子縁組をしたのだという。
それを決意できたのは、タイムリープ先で私が「味方だ」と言ったからだと愁斗くんは言った。
あの時、私は確かに愁斗くんを救ったのだ。
愁斗くんの心も、失われるはずだった未来も。
「さ、社内に戻ろう。新しい部署でやり直すんだ」
「ありがとう」
「言ったろ、俺は小春の味方だって」
屋上を立ち去る瞬間、「充実した人生を」と言う声が聞こえた気がして、私は後ろを振り向いた。
そこには誰もいなかったけど、一瞬タバコのニオイがした気がした。
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