【01】 死神は鎌を持たない

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「3つ目は、大学4年生の時です」 黄色い扉が現れ、その上に、就職活動に励む私の映像が映し出される。 内定先は3つあったのに、私は就職先の選択を間違えた。 お局様に目をつけられ、いびられるだけの日々が始めりだった。 それがいつしか、部署内の社員全員に無視をされ、残業を5時間以上しなければ終わらない仕事量を割り振られ、誰かのミスを押し付けられる毎日になってしまった。 この会社に就職しなければ――いっそ面接さえ受けなければ…。 「さて、どこからやり直しますか?タイムリープですから、あなたの周りの過去は改変することもできます。あなたの好きなように生き直してください」 死神の言葉に、私は3つの扉を眺める。 「たとえばだけど、私が受けたいじめをなかったことにすることもできるんですか?」 「えぇ」 「じゃあ、他の人が受けているいじめも?」 「いいえ、それは残念ながら…。他者の過去に大きく関わることはできません。あくまで、変えられるのはあなたの行動、過去のみです」 それなら、妥当に考えたらタイムリープするべきは、小学生の時だろう。 やり直せる期間も長いし、不幸の始まりはきっと当時のいじめだったから。 私が受けたいじめを丸ごと、なかったことにできれば、きっと人生は充実する。
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