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【02】 自分のための選択
「本当にその扉でよろしいのですか?」
死神が聞いてくる。
私は、目の前の赤い扉に手をかけ、頷いた。
「念のためもう一度言いますが、これはあなたのためのタイムリープです。ご自身にとって最善の選択をして、今度こそ充実した人生を送っていただかないと」
私は後ろを振り返った。
少し困った顔で立っている死神に、「大丈夫」と答える。
「ちゃんと、私自身のための選択ですから」
小学生の時にいじめられていた私を助けてあげたいとも思う。
そうすればきっと、綺麗な心のまま大きくなれただろう。
でも、そこでいじめをなくしたって、他者の過去に干渉できないということは、私を助けようとしてくれた彼は救えない。
きっと、私の過去が変わったって、彼はいじめられる人生のままだ。
「ずっと、後悔してたんです。私を助けようとしてくれた彼を、どうして私は助けなかったんだろうって」
あの頃の私は、親が再婚したことでいじめられなくなった。
だから、彼を助けることで、またいじめられるかもしれないのが、怖かった。
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