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「私は、臆病な私のことも、助けてくれた彼のことも、両方救いたい。それはきっと、私にしかできないことだから――」
だから、私はこの扉を選んだ。
「わかりました。それがあなたの最善ならば」
死神の返事に、私は大きく頷いて。
それからゆっくりと赤い扉を開けた。
扉をくぐる直前、後ろから「充実した人生を」という声が聞こえた。
その声を背中で受け止めて、私は大きく一歩を踏み出した。
◇◇◇
目を開けると、布団の中にいた。
ゆっくり起き上がると、卵焼きの焼けるいい匂いに気づく。
ハッと鏡を見ると、中学生の頃の幼さが残る顔が映し出された。
「ホントに戻ってる…」
記憶もある。
今の内に、メモしておこう。
私はタイムリープのこと、死神の言葉、タイムリープ前の人生の記憶を箇条書きでメモした。
卓上時計に目を向けると、今日の日付は6月20日になっている。
親が再婚して1ヶ月になる頃だ。
私は部屋を出て、リビングに向かった。
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