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私にはホテルのバトラーとしての顔以外に、「表」の顔がある。
本業で関わりのある人々は、皆が口を揃えて、私の天職はそちらの方だと言う。
残念ながら、バトラーの仕事でより良いサービスを追求しても、副業に過ぎないのだ。
だから、バトラーは「裏」の私。
「表」の顔が表であり続ける限り。
後輩にはああ言って誤魔化したけど、これから幸四郎とのディナーの予定が入っている。
そもそも、幸四郎に『奇跡の夕景』の話をしたのは、私だった。
二つ星の人気店だから予約は半年待ち。
だけど今回は大いに公私混同して、幸四郎がした予約を裏ルートから通してもらった。
A5ランクの神戸牛や北海道直送の海鮮が売りらしいけど、私の目的はそれだけじゃない。
よりによって、なぜ今日なの。
まるで日にちを合わせたみたいに。
しかも、このホテルでの任務。
内部事情に詳しいのは有利だけど。
久しぶりに、幸四郎と積もる話をしながら、ゆっくりと食事ができると思っていたのに。
今夜、本業の仕事が入っている。
16階の鉄板焼きレストランでディナーをする必要のある仕事が。
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