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未完の絵
都会の片隅に佇む、小さな美術館。
蝶つがいを軋ませて館内へ滑り込むと、静謐な空気が身体の内側へと流れ込んでくる。
「おや、ミサキちゃん。いらっしゃい」
声のした方へ身体を反転させると、柔和な笑みを浮かべた初老の男性が、通路を歩いてくるのが見えた。
彼は父の弟に当たる私の叔父で、この美術館の館長を務めている。
「叔父さん、こんにちは。あの……」
「ああ、兄……お父さんの絵だね」
叔父はそう言って、奥にある展示室へと案内してくれた。
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