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この世界には、アルファ、ベータ、オメガという三種類の人種がいる。
昔は、アルファが圧倒的な優位に立つ、特権階級のようなポジションだったらしい。
ベータは、ありていに言えば平凡な民衆のようなポジション。
そしてオメガは、持病のように定期的に訪れる発情作用の為に全ての人種の下位とされ、その中でも特にオメガの男性は、屈辱的な地位に置かれていたそうだ。
しかも、王侯のようなアルファと、最下位のオメガの関係は……主従関係というか奴隷関係というか。
つまり、オメガはアルファの玩具であるのように扱われ、実に酷い待遇であったらしい。
しかし、それも昔の話。
現在では、オメガの発情を完全に抑える事の出来る、副作用0の上に誰でも買える安価な薬が開発されており、アルファのフェロモンによって引き起こされる病も完全に克服されている。
今や、アルファ、ベータ、オメガの間に格差はない。
――――そう、無いのだ。
たとえそれが『運命の番』だとしても、それを理由にアルファがオメガへ婚姻(性的)関係を強要する事など不可能になった。
今の世の中でそんな事をしようものなら、問答無用でブタ箱行きだ。
交際を申し込み、オメガ側がそれをOKしない限りは、たとえ運命の番だとしても決して許されない事になっている。
かつては、まるで性奴のように惨い扱いを受けていたオメガにとって、本当に優しい世界となったワケだが。
問題は、この逆のパターンだろう。
飯岡実里は、その男を見て直ぐに理解した。
稲妻が、頭の先から足の先まで一気に駆け抜ける感覚だった。
彼は、自分の運命の番だと!
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