幸せが怖い病気

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「雨、だ」  ポツンと頬にあたった雫が、ひとつ、ふたつ、みっつ。  夕方になって、急に梅雨だということを思い出した空を恨めしくて睨むと。 「少し雨宿りしてこうか?」  指さす先は、初めて手をつないだ日に、一度だけ二人で入ったことがあるハンバーガー屋さん。  何だか放課後デートみたい! って一人で浮かれてたのを思い出して、あの日の続きのようで嬉しくなる。   「してく!」  嬉しくてブンブン首を縦に降ったら類くんがまた吹き出した。 「日菜のそういうとこさ」 「うん?」 「めっちゃ面白いから飽きない」 「……類くん、それって褒めてる?」 「褒めてる、褒めてる」 「二回言う時って、絶対そう思ってないもん!」  手をつなぎ走りながら、目の中に雨が入りそうでパシパシ瞬き。  否定もせずイタズラっぽく目を細めて、猫みたいに笑った類くんが、心の奥に焼き付いて。  多分もう消えることはない。  たったの二ヶ月で、誰かをこんなに好きになるなんて。  誰かを想うことができるようになるなんて。  一年前の自分には考えられなかった。  幸せ過ぎて、胸が痛いの。  
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