幸せが怖い病気

12/13
前へ
/132ページ
次へ
「お姉ちゃーん、早くお風呂入っちゃえって」  ノックもせずにドアを開けた妹。  ベッドの上に起き上がり、返事もせずに妹の顔を見つめた。 「なに? なんか、ついてる?」  二歳年下の妹・菜月(なつき)は私がものを言わずに見ているものだから、口を尖らせて眉をひそめている。  なあちゃんは、いいなあ。  目鼻立ちが整ってるし、彼氏っぽい子もいるみたい。  同じ親から生まれたというのに、なんで!! 「ねえ、なあちゃん」 「ん?」 「正直に教えて欲しいの。お姉ちゃんって、どうしたら美人になれる? メイクで変われたりする?」 「は?」  トコトコと歩いてきてベッドに腰かける。  私も起き上がって、なあちゃんと向き合うように座った。  この間、約一分、お互いに何も言わずにじっと見つめ合ったままで。  なんなの、この沈黙……、妹よ、そろそろ苦しい。  そう感じ始めた頃に、なあちゃんはクスッと微笑んだ。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加