不安しかない症候群

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 六月半ば、梅雨明け間近。  私にとって、とんでもない発表があった。  黒板にデカデカと書かれた文字に、クラクラと眩暈(めまい)を覚える。 『一年生クラス対抗交流球技大会』  なんなん? それってなんなん!?  球技って、あの球技!? スポーツってこと!?  運動会なんて大嫌いだった。  どれくらい嫌いかというと、雨が降りますように、台風が来ますように、なんなら季節外れの雪でもいいのに! と一週間前から逆さテルテル坊主を吊るし祈ってたほど。  まあ、そんな私の(のろ)いをあざ笑うように、毎年晴天の運動会は行われたわけだ。  わかる? 全員参加リレーの時に、『天野は何番目に走らせるか』という綿密な計画を、本人の目の前で練られるの、毎年、毎年!  なぜって、私の走る順番によって大きく順位が左右されるのだから。  で、負けたら、ちょっとね、じとっと睨まれちゃうわけ。  だよな、天野がいるし、って思われちゃうわけ。  つまり、クラスで一番足の遅い私は、皆にとって足手まといでしかなかった。  だから、いまだに運動は大の苦手、この高校に体育祭なる悪魔の催し物がないことに、心の奥で狂喜乱舞(きょうきらんぶ)していたというのに。  これは悪夢なんじゃないかな?  目を閉じてゆっくり開けたらあの文字は消えていないだろうか?
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