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――君との出逢いは必然。
泣いているように笑うから、私も胸が苦しくなった――
白く儚げなソメイヨシノはとうに散った。
かわりに、あざやかな桃色のドレスを幾重にもまとった遅咲きの八重桜が咲き誇る。
どこまでも続く四月の青い空をバックに、風に吹かれフワフワと桃色の花びらのシャワー。
今日はきっといい日になる――。
桜の香りを飲み込んでしまうみたいに、大きく深呼吸をしてから、パシャリ。
一番美しく桜が映る場所を探し、いろんな角度からスマホを掲げる。
朝一番に来たのは正解、だってこんなに綺麗な景色をひとり占めできちゃったから。
「……」
不意に、誰かに呼ばれた気がして振り向いた。
いつの間にか、桜の幹をはさむ形で深緑色のタイをした見たこともない男の子が一人立ちつくしている。
私のリボンタイと同じ色、同級生だ。
「あの、」
一瞬、泣いてるみたいに見えた。
私の顔を食い入るように見つめた彼は、どこかあきらめたような顔をしていた。
彼の目は、私をしっかりと捉えて。
それから、残念そうに、がっかりした目をしてから、小さなため息をこぼす。
彼の表情に私の方が、なぜか泣きたい気持ちになって。
シャッターをきるみたいに、パシパシと瞬きした。
真っ青な空、風に舞う桃色の花びら、彼の顔が瞳の奥に焼きついてく。
――キラキラキラキラ、あの瞬間、君に恋をしたんだ――
「瞬恋glitter」
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