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窓に吊るしていた逆さテルテル坊主を恨めし気に見上げた。
七月一日金曜日、晴れ。
交流球技大会の日は、雲一つない晴天だった。
「まあ、仕方ないってば。お姉ちゃん、晴れ女だし」
窓の外を見てため息をついた私に、玄関に向かっていたなあちゃんが足を止める。
「晴れ女? 私が?」
「そ、大体特別な日は晴れるでしょ?」
特別な日というか、マラソンの時とか、こういう苦手な運動系イベントは確かに晴れてる……。
「ええ!? 私って晴れ女だったの?」
「そうだよ、今頃気づいたの? ハイ、じゃあそういうことで。お先に~! お姉ちゃん頑張ってね、怪我だけはしないでよ! いってきます!」
「ありがと、なあちゃん! いってらっしゃい。気を付けてね~!」
なあちゃんは吹部の朝練があるとかで、最近は私より一時間も前に家を出ていく。
「日菜~! 起きてるなら、ご飯食べちゃいなさいね~! お母さんもそろそろ出るから戸締りよろしく!」
運送屋さんの事務のパートをしているママも、なあちゃんから遅れること十分、バタバタと自転車に乗り出かけていく。
パパはもうとっくに通勤電車の中だろう。
ゆっくり着替えて身支度を整えてからキッチンでパンを焼く。
コーヒーを淹れママの作った目玉焼きとサラダを食べながら、テーブルの上に置いていたスマホを見た。
チカチカと光るメッセージのお知らせ。
行儀悪いけど誰もいないし、とその知らせを開けた。
『晴れた~!』
その一言と添えられていたのは、青空をバックに自撮りした類くんの写真。
今日も笑顔が眩しい、尊い……。
類くんの笑顔は、朝から抱えていた憂鬱な気分を一気に吹き飛ばしてくれた。
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